かげむし堂

音楽と、音楽家と、音楽をめぐる物語について。

【連載】春秋社PR誌『春秋』2017年10月号「フェルディナント・リース物語」第1話掲載

春秋社さん刊行のPR誌『春秋』にて、「フェルディナント・リース物語」の連載がスタートしました。4ページ×全6回(予定)で、私が数年前より追いかけている音楽家、フェルディナント・リースの人生を辿ります。

 

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第1話掲載の2017年10月号(No.592)では、彼が“音楽の楽園”ことボンの中でどのように生まれ育ち、16歳でウィーンへの音楽修業の旅に出るに至ったかを綴っています。

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【同人誌】『偏食家ベートーヴェンの食卓』『大食漢ホルツの朝食』通販情報

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音食紀行さんのイベント「偏食家ベートーヴェンの食卓」および夏コミC92で頒布した同人誌のBOOTHでの通販を開始しております。

 

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ベートーヴェンをよみがえらせるということ@第1回「偏食家ベートーヴェンの食卓」(#音食紀行)終了いたしました(2017.6.3)

企画いいだしっぺ、というか、小間使い、というか。
とにかく一介の出しゃばりとして携わらせていただいたイベント
「偏食家ベートーヴェンの食卓」が終了いたしました。

 

音食紀行主催
第1回「偏食家ベートーヴェンの食卓 ~ 1820年代ウィーン」

2017年6月3日 13時~ カフェ・トリオンプ

togetter.com

 


いうまでもなく当イベントの心臓は、今をときめく歴史再現料理イベンター・音食紀行さんが手がける美味しい料理なわけなので、エプロンを付けていない私が「お越しいただきありがとうございました」と言っちゃうのはとてもおこがましい気がするのですが、でも、でも……!!
本当にありがとうございました。

 

受付も販売もトークも不慣れで終始あわてっぱなしでしたが、お越しいただいた27名のマエストロはご当人と違ってとても優しく(……笑)、その寛大さや、イベントを楽しもうとしてくださるお心に甘えながら、楽しいひとときを共にすることが叶いました。

 

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Photo by @LalaraTachibana

 

レ・ミゼラブル食事会Vol.1ダイジェスト編」にお伺いし、主催の遠藤雅司さんに「ベートーヴェンをテーマに、同じようなことができちゃいそうな気がするんですけど……!!」と持ちかけたのが、昨年の12月。
うれしいことにすぐにノッてくださって(この勢いの良さが本当にスゴい……!)あっという間にスケジュールも組んでくださり、企画に乗り出すに至ったのでした。

 

で、言い出したはいいけど。
ベートーヴェンって、実際、なに食べてたんだろう……?
「魚が好き」「パルメザンチーズをかけたマカロニが好き」「コーヒーを1杯につき60粒、自分で数えて淹れていた」「ワインが好き」……
などなど、あれやこれやの本で再三語られているエピソードはすでに頭のなかにありましたが、いざ1820年代ウィーン風の「メニュー(定食)」を組むとなると、もう少しネタの収集が必要。

 

そこで……秘密兵器(?)こと、「会話帳」の出番なわけです。
会話帳(Konversationshefte)……つまり、ベートーヴェンが晩年の9年間に使用していた筆談用のノート。

 

kage-mushi.hatenablog.com


耳が聞こえなくなるという運命を背負ったゆえに、「偶然にも」そして「やむを得ず」この世に残された奇跡的な遺品。
その呆れるほどに俗っぽく愛おしい生の痕跡のなかにちらばった、なんとも生々しく、またしばしば要領を得ない「食」情報の断片
それらを必死でかきあつめ、同時代の料理本のレシピを漁り(とあるウィーンの男爵家に仕えるベテラン女性料理人が書いたという、この料理本の実用的でユニークなことといったら……!)、最後に音食紀行さんの「おいしくなければ料理じゃない」という力強い哲学によって魔法をかけられ、なんとか5皿の料理にまとめあげることができました。

 

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国民的アニメ(とあえて言おう)「クラシカロイド」へのリスペクトを込めた、二次創作的「ギョーザー」を実現できたのもまた嬉し。

パンのスープ」も、後世の伝記だと「ねこまんまのごときゲテモノを食っていた」的に表現されていたりもするのだけど、当時の中流家庭の食卓やレストランでも供されていたきちんとしたスープだということが調べているうちにわかり、……お味だって、ホラ、ちゃんとおいしいじゃないですか!!!

ベートーヴェンが病床で食べた(……ということが、このたび「会話帳」を読み漁っていて判明した)「いちごのシャーベット」も、ご覧の通りとってもフォトジェニック。

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Photo by @LalaraTachibana

 

ウィーン会議の晩餐会で供されていてもおかしくなさそうな美しさではありませんか。

 

          *

 

で、終わってみて。

残されたいくつかの情報を手がかりに、こしらえて、味わって、咀嚼して、自分の身にするという意味では、音楽も料理も同じなんだな。

すごく素朴な感想ですが、そんなことをあらたえて思いました。

 

当時のレシピをもとに、メニューをよみがえらせるということ。

それは演奏家であれば楽譜を奏でることであり、
リスナーであればその奏でられた音を聴くことであり、
創作家であれば彼の姿を絵や彫刻や文字で描写することであり、
旅人であれば彼の眠るウィーンの墓の前にたたずんで、近くて遠い200年の歳月を埋めるような深呼吸をすることと、まったく同じ。

 

だからこそ、この日、ライターさん、研究者さん、演奏家さん、クラシカロイドや史実にまつわる物語の創作家さんなど、さまざまな手法でベートーヴェンの姿を現代によみがえらせようとしている方々にお越しいただき、一緒に料理を味わえたことを、本当にうれしく思いました。

 

この音食紀行さんの歴史再現料理が、ベートーヴェンを愛してやまない多くの方々にとって、彼の姿をよみがえらせるといういとなみの新たな種になったら、これ以上にフロイデなことはありません。

 

          *

 

……というわけで。

ありがたいことにその「次」なる機会が、早速やってまいりました。


メニューは同じ、人数は小ぢんまりと。ぜひまた、素敵なマエストロにお目にかかることができましたら幸いです。

 

音食紀行主催
第2回「偏食家ベートーヴェンの食卓 ~ 1820年代ウィーン」

2017年7月8日 18時~ Cafe灯菜

eventon.jp

 

また、旬の素材をリニューアルした「秋」編も、今年の後半に開催予定…だそうです!

 

音食紀行さんのレシピ&私が書かせていただいたストーリー&双方のエッセイを収めた同人誌「偏食家ベートーヴェンの食卓」は、まもなくBOOTHでも通販開始いたします(もしくは音食紀行さんに直接お問い合わせくださいませ)。

 

          *

 

40代、あるいは1810年代のベートーヴェンが失ったもの@「ベートーヴェン 音楽の恋文~遙かなる恋人へ」月瀬ホール(2017.2.12)

遅ればせながらのレポートですが。
去る2月、自由が丘・月瀬ホールで開催されたコンサートのトークゲストとしてお招きいただきました。

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blog.goo.ne.jp

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「ベートーヴェンの会話帳」──終わりのない対話(2007.03)

10年近く前(大学院時代)に書いたエッセイ。読み返したらおもしろい部分もいくつかあったので載せてみます。

 

 

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