かげむし堂

音楽と、音楽家と、音楽をめぐる物語について。

【連載】春秋社PR誌『春秋』2018年4月号「フェルディナント・リース物語」第6話(最終話)掲載

春秋社さん刊行のPR誌『春秋』にて連載中の「フェルディナント・リース物語」、第6話(最終話)が2018年4月号(No.597)に掲載されました。

 

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(前回までのあらすじ)半ば音楽界引退のつもりでロンドンから故郷に帰還したリースだったが、ニーダーライン音楽祭での「第九」の指揮を機に、再び音楽家として再起することを志しフランクフルトへ移住。ベートーヴェンが亡くなった翌年の1828年、人生初のオペラ『盗賊の花嫁』初演を成功させるのであった……

 

早いもので最終話となりました。
ラストをどういうシーンで締めくくるかということだけは、実はわりと最初から決めていました。

 

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ボンのベートーヴェン

 

黄金期が終わったときにどう身を振るか、というのは、一度でもブレイクした人の宿命的な命題のようなもので、リースにとって、あるいは同世代の音楽家たちにとって、1830年代というのはその命題に苦しめられた時代だったように思います。

 

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最後のピアノ・ソナタ Op.176

 

リースの場合はフンメルのように明確に聴衆から見放された時期があったわけでもなく、フィールドのようにアルコール中毒に罹ってしまったわけでもなく、大きな仕事も死の間際までちゃんとあり、何やかんやおおむね楽しそうでもあり、ハッピーエンド的な見方もじゅうぶんに可能なわけですが、それでも、活動や手紙のそこかしこからうかがえるさまざまな想いを少しなりともすくい上げたいと思いつつ書きました。

 

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ところで話せば長いのでここでは語りませんが、リースの墓(納骨堂)ってめちゃくちゃヘンなんですよ!!!謎の解明者求む!!!

 

与えられたカードで果敢に勝負して生きたリースという人が私はとても好きで、では彼にとって何がカードだったか、何が勝負だったのか、ということを、あらためて考えてみたのがこの連載でした。

定期購読してくださった方、毎回書店で探してくださった方、ご感想をくださった方、みなさま本当にありがとうございました。
このような機会を与えてくださり、また多岐にわたって的確なアドバイスをくださった春秋社さんにも心から感謝申し上げます。

 

私自身はもう一生リースと付き合っていく所存なので、取り組みたいことは大小いろいろあるのですが、


・自分自身が30代のうちに、30代のリース(つまりロンドン時代)をもう少し徹底して書いてみたい
・ヴェーゲラー=リースの『ベートーヴェンに関する覚書』を何らか日本語で読めるようにしたい
・もうちょっと作品をちゃんと語れるようになりたいぞ!

 

というのがさしあたり中期目標として考えていることではあります。
今後とも節操なくさまざまな形でこの人を取り上げることができればうれしいです。

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