【書籍】『ベートーヴェン捏造』サウンドトラック(Spotifyプレイリスト)
『ベートーヴェン捏造 - 名プロデューサーは嘘をつく』
かげはら史帆/柏書房
「運命」は、つくれる。
犯人は、誰よりもベートーヴェンに忠義を尽くした男だった──
音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」の全貌に迫る歴史ノンフィクション。
『ベートーヴェン捏造 - 名プロデューサーは嘘をつく』のプレイリストを音楽ストリーミングサービスSpotifyで作成しました。
月額料金なしのFreeプランで聴くことも可能ですので、ぜひ本を読む際のBGMや参考音源としてご利用ください。
【プレイリスト】
【プレイリストひとこと解説】
なるべくベートーヴェンが生きていた当時のオリジナル楽器(フォルテピアノ等)や当時の奏法に準じた演奏を集めました。よく耳にする演奏と少し音色や雰囲気が違うなと感じられたら、そのようなタイプの録音であるとお考えください。
Tr. 1 裏表紙
ベートーヴェン: 11のバガテル Op. 119 - No. 11
『ベートーヴェン捏造』のカバー裏表紙に描かれているピアノは、ベートーヴェンが1818年(ちょうど会話帳を使い始めた年)にロンドン・ブロードウッド社から贈られたもの。ハンガリー国立博物館に保存されている現物による貴重録音をどうぞ。
Tr. 2 p.17
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 「悲愴」 Op. 13 - II. Adagio cantabile
CMやポップスアレンジなどで耳にすることも多いピアノ曲。作曲された1798年は、ベートーヴェンが耳疾の兆候を感じ始めた頃でもありました。
Tr. 3 p.18
ベートーヴェン: 交響曲第5番 ハ短調 「運命」 Op. 67 - I. Allegro con brio
いわずと知れた「ジャジャジャジャーン!」。このモチーフに関するシンドラーとチェルニーの見解の相違(p.263)も本書に登場します。読んだあとに聴くとイメージが変わるかも。
Tr. 4 p.18
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 「テンペスト」 Op. 31, No. 2 - I. Largo - Allegro
交響曲第5番を「運命」という副題(通称)で呼ぶのは必ずしも世界共通の傾向ではないですが、「テンペスト」は世界的に副題として用いられているようです。
Tr. 5 p.33
B. ロンベルク: チェロ協奏曲第1番 変ロ長調 Op. 2 - I. Allegro
ベルンハルト・ロンベルクは、ボンの宮廷楽団への在籍歴もある、ベートーヴェンと縁の深いチェリスト。のちにフェルディナント・リースとロシア遠征旅行にも出ています。こちらの協奏曲は1803年作曲。青年シンドラーもオーケストラの一員としてこの曲を奏でたことがあったのかもしれません。
Tr. 6 p.33
ベートーヴェン: 2つの歌 WoO 118 - I. 愛されない男のため息
ちなみにシンドラーが生まれた1795年にベートーヴェン(24-5歳)が作曲した作品はこちら。意味深……。もうシンドラーのテーマ曲ということでいいのではないか(ちなみにこの曲に連なる「愛の返答」というレスポンスの歌もちゃんとあります)。歌詞はこちら。
Tr. 7 p.40
シューベルト: リーゼンコッペの頂上にて D. 611
曲調はきわめて穏やかですが、内容はバリバリ愛国だったりします。これが当時の若者の一般的な「思想傾向」だったんですね。
Tr. 8 p.43
ベートーヴェン: カンタータ「栄光の瞬間」 Op. 136 - III. Aria with Chorus: O Himmel, welch' Entzucken! (Vienna, Chorus)
シンドラー、のちにこの曲を評していわく「これがベートーヴェンの作品のなかでもっとも劣ったものであることは、誰しも認めているとおりである」…お、おう…。ウィーン会議のトラウマ深し、シンドラー。この曲に関してはこちらの同人誌「ウィーン会議(音食紀行)」にコラムを寄せていますので、ご興味ありましたらぜひ。
Tr. 9 p.55
ベートーヴェン : オペラ「フィデリオ」 Op. 72 - 序曲
「フィデリオ」はベートーヴェン唯一のオペラ。ちょうどこの書き込みが行われた前日(1822年11月3日)、ケルントナートーア劇場で「フィデリオ」の再演が始まっており、からくり時計はそれにちなんでのサプライズだったようです。
Tr. 10 p.62
ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 「月光」 Op. 27, No. 2 - I. Adagio sostenuto
ベートーヴェンが「元カノ」ジュリエッタに献呈したのがこちらの有名な「月光ソナタ」。
Tr. 11 p.62
モーツァルト : オペラ「魔笛」 K. 620 - 可愛い娘か女房がいれば
モーツァルト最晩年のオペラ「魔笛」の名物キャラ、非モテ系の鳥刺し男パパゲーノが歌うアリア。
Tr. 12 p.63
ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス Op. 123 - Kyrie
完成まで4年を費やした大作ミサ曲。シンドラーがベートーヴェンに仕え始めたのは、ちょうど作曲の大詰めの時期。ということで、シンドラーにとってもなにかと縁のある作品(きっと、だから改竄を思いついちゃったんだなあ)。「第九」初演と同日にこの第1曲目「キリエ」も演奏されています。
Tr. 13 p.67
ロッシーニ: 「セヴィリアの理髪師」 - おいらは町のなんでも屋
ベートーヴェンが「こりゃかなわねえ…」と思うのもやむなしのロッシーニ節全開の陽気なアリア。
Tr. 14 p.79
ベートーヴェン:冗談カノン「ファルスタッフちゃん、おいで」WoO184
ベートーヴェンも陽気な曲がからきし苦手というわけではなく、気のおけない友人にはこんなカノンを書いていたりもします。こちらはシュパンツィヒに捧げられたおふざけカノン。
Tr. 15-16 p.80
ベートーヴェン : 交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」 Op. 125 - IV. Finale(抜粋)
いわずと知れた「第九」。この作品の初演に関われたのはシンドラーにとってはなんやかんやで僥倖だったでしょうね。終わったあとにとんだ悲劇が待っていたわけですが……
Tr. 17 P.94
ベートーヴェン : ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 「皇帝」 Op. 73 - III. Rondo: Molto allegro
この曲をチェルニーが弾いてくれれば大レドゥテンザールもアツくなるぜ!!!的な。まあ、気持ちはわかる(わかる)。ちなみにチェルニーが演奏を依頼されたのは第2楽章と第3楽章だったそうです。
Tr. 18 P.94
ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 「ハンマークラヴィーア」 Op. 106 - IV. Largo - Allegro risoluto
この曲をバリバリ弾かれたら惚れちゃうよね。まあ、気持ちはわかる(わかる)。
Tr. 19 p.99
ベートーヴェン : 大フーガ 変ロ長調 Op. 133
ベートーヴェン作品のうちもっとも難解といわれているこの曲も、シュパンツィヒ弦楽四重奏団によって初演されました(初演時は「弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調」の終楽章として演奏され、のちにシュパンツィヒらの助言によって独立した作品となりました)
Tr. 20 p.121
モシェレス: ディアベリのワルツによる変奏曲
イグナーツ・モシェレスは当時No.1の実力を誇るユダヤ系ドイツ人ピアニスト。ウィーン滞在歴もあり、ウィーン在住の音楽家が多数参加した競作プロジェクト「ディアベリ変奏曲」にも曲を寄せています。
Tr. 21 p.124
ベートーヴェン : 3つのエクアーレ WoO 30
ベートーヴェンの葬列でこの作品の合唱編曲版がしめやかに歌われたと伝えられています。
Tr. 22 p.128
ベートーヴェン=リスト編:交響曲第7番 イ長調 S464/R128 - II. Allegretto
たしかに死者を悼むのにふさわしい雰囲気の曲かもしれません。リストによるピアノ曲編で。
Tr. 23 p.150
リース: ピアノ・ソナタ 変イ長調 Op. 176 - I. Allegro non troppo
ベートーヴェンのピアノの弟子であるフェルディナント・リースは、作曲家としても活躍。1820年代にはときの人気作曲家のひとりとして一世を風靡しました。こちらは1832年作曲の最後のピアノ・ソナタ。
Tr. 24 p.157
シューベルト: 若い尼僧 Op. 43 No. 1/D. 828
シンドラーが病床のベートーヴェンにすすめた(と本人が主張している)シューベルト作品のひとつ
Tr. 25 p.160
ベートーヴェン : 交響曲第6番 ヘ長調 「田園」 Op. 68 - I. 田舎に着いた時の晴れ晴れとした気分の目覚め
交響曲第5番「運命」と同じく1808年12月に初演。練習不足かつ会場は極寒、伝説の大失敗演奏会として名を残しています。「運命」とは異なり、「田園」はベートーヴェン本人による標題。
Tr. 26 p.169
リース: オラトリオ「イスラエルの王」 Op. 186 - Part 2: Dem Sohne Davids Lob und Ehre!
リースとシンドラー、ニーダーライン音楽祭の大舞台で、いったいどんな顔でこの曲を一緒に演奏したのやら……。
Tr. 27 p.174
ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 「熱情」 Op. 57 - III. Allegro ma non troppo - Presto
たとえばこんな有名曲も「情熱的なやつ」としてリースによって演奏されたのでしょうか。1805年作曲。
Tr. 28 p.181
ヨハン・シュトラウスI世: ケッテンブリュッケ・ワルツ Op. 4
ヨハン・シュトラウスI世(シュトラウス父)はビーダーマイヤー期に活躍した作曲家。「ラデツキー行進曲」が広く知られています。こちらのワルツは、ベートーヴェンが亡くなった年である1827年に作曲されました。
Tr. 29 p.218
リスト: ディアベリのワルツによる変奏曲
「ディアベリ変奏曲」の競作プロジェクトには、当時ウィーンで研鑽を積んでいたリスト少年も参加しています。おそらく1822年(11歳頃)の作曲。
Tr. 30 p.218
チェルニー: ディアベリのワルツによる変奏曲(コーダ)
リストの師チェルニーも同プロジェクトに参加。コーダの作曲という名誉にもあずかっています。
Tr. 31 p.218
チェルニー: ピアノ・ソナタ第1番 変イ長調 Op. 7 - I. Andante - Allegro moderato ed espressivo
ちなみにどさくさですがチェルニーのピアノ・ソナタがとっても魅力的な作品なのでぜひ聴いてやってください。全5楽章はこちら。
Tr. 32 p.212
ベートーヴェン : 「コリオラン」序曲 ハ短調 Op. 62
ベートーヴェン像除幕記念式典で演奏された作品のひとつ。
Tr. 33 p.242
ヴュルナー: クリスマスの子守唄
ヴュルナーはのちに合唱の専門家として大成、『コールユーブンゲン』や数々の合唱曲を作曲しました。シンドラー、ピアノじゃなくて合唱をメインで教えるべきだったのでは……。
Tr. 34 p.242
ワーグナー : 楽劇「ワルキューレ」 - ワルキューレの騎行
ヴュルナーは指揮者としても活躍、ワーグナーの楽劇『ラインの黄金』と『ワルキューレ』の初演を指揮しました。
Tr. 35 p.249
ワーグナー : 歌劇「タンホイザー」 - 序曲
リストもワーグナーの歌劇『タンホイザー』初演を指揮。シンドラーにとっては、敵も味方もワーグナーに持ってかれた状態に。
Tr. 36 p.286
ベートーヴェン : 交響曲第8番 ヘ長調 Op. 93 - II. Allegretto scherzando
ひょっとしたら「運命」と同じようなノリで、この交響曲も「メトロノーム」という副題で呼ばれていたかもしれません。タタタ・カノンは残念ながらSpotifyに入っていなかったのでここからどうぞ。
Tr. 37 p.299
リース : ピアノ協奏曲第7番 イ長調 「イングランドからの別れ」 Op. 132 - I. Grave - Allegro con moto
シンドラーが「名人芸的作品」と位置づけて毛虫のように嫌っていたリースのピアノ協奏曲。まあ、けなされるのも勲章ですよね。著者はリースの作品のなかでこの曲がいちばん好きなのでぜひ聴いてほしいです!
Tr. 38 裏表紙
ベートーヴェン : 6つのバガテル Op. 126 - No. 6
ふたたび裏表紙へ。ハンガリー国立博物館に保存されているブロードウッド社製ピアノによる演奏を。このバガテルは、ちょうどシンドラーがベートーヴェンに仕えていた1823-24年頃の作曲。
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