恵比寿のcouperin (クープラン) ~現代において、西洋の歴史に敬意を払うとはどういうことなのか?(2016.9.12)
ひそかに気になっていた恵比寿のアトリエ、couperin (クープラン)にお誘いいただきました。
19-20世紀のフランスへのリスペクトに満ちあふれた…といっても、「世紀末のパリのカフェを再現しました!」というような、ゴテゴテしくキッチュなコスプレをしているわけではなく。
あくまでも21世紀の東京らしく、また、恵比寿のおしゃれスポットらしく、こぎれいで品のある小さなアトリエ。
乳白色に乳白色をさらに重ねた、やわらかな色合いのなかに、19-20世紀の様式のカップやお皿が、ひかえめに、静かに並んでいる。
そして、「couperin」という名前にふさわしく、ほんの少し香りづけのように、あるいはそよ風のように、古楽が流れている。
そういう場所でした。
「お金のない若い人でも、持って帰れるものがあるところがいいよね」
と、ちょいちょいと指差されたところに、かがみこんでみると。
これ、往年のフランスの住居の賃貸契約書なんだとか。(1枚300円で販売!)
併設されているカフェはfiltopierre - フィルトピエールという名前。
とても美味しいケークサレ(お惣菜ケーキ)とデザートをいただきました。
私の席に運ばれてきたコーヒーカップは、ナポレオン3世時代の様式のもの、とのこと。
文化の影の漂うアンティークが、物を長く使い続けるフランスには未だに残っています。
長い時を経てきたアンティークは昔を知る頼りになり、
そうして知った昔は、今をほんの少し豊かなものにしてくれる。
そんなメッセージが、場にいるとひしひしと伝わってきます。
日本において、東京において、あるいは現代において、西洋の歴史(文化や産業)に敬意を払うとはどういうことなのだろう。
そのひとつの答えを形づくっているような空間でした。
ウェルカム感のある、とてもやわらかな空間ですが、その裡にたしかな理念の芯をもっていなければ、こういう場をつくり上げることはできないだろうと思います。
発想としても、哲学としても、手法としても、得るものがたくさんあるアトリエでした。(これほどシンプルさを極めたような空間なのに!)
イメージがたくさんふくらむような、すてきな場所にお誘いいただきました。(写真を並べるのも楽し)https://t.co/ptxACz9ALD pic.twitter.com/NQii54oWBa
きのうお伺いした場所で得た「あるところにはあるんだ…!」という快い感動を、クラシック音楽もほかの分野の方々に対して与えなければいけない(そういう橋渡しを担う人がいなければならない)のだなあとあらためて。
— かげむし (@kage_mushi) 2016年9月12日